クラウド上で制作した医薬品集のこと
「クラウド型(医薬品集)」は、文字通りクラウド上で制作した医薬品集です。
内容は医薬品情報サイトのリンクや専門書の引用で構成されています。
これは、IT全盛という時代背景を考えれば、誰でも普通に思いつく発想です。
当院では、この「クラウド型」を2013年より導入しています。
≪当院のクラウド型医薬品集の概要≫
■ プラットフォーム:kintone(サイボウズ社)
■ 主なリンク元
医薬品医療機器情報提供ホームページ
製薬会社医療関係者向け情報サイト
医薬品情報サイト(SAFE-DI・Clinical Cloudなど)
透析患者に対する投薬ガイドライン(白鷺病院)など
■ 主な引用書籍
錠剤・カプセル剤粉砕ハンドブック第8版(じほう)
内服薬 経管投与ハンドブック第4版(じほう)
実践 小児薬用量ガイド 第3版(じほう)
注射薬調剤監査マニュアル 2021(エルゼビア・ジャパン)
■ アプリ呼称:Hospital Formulary(処方)・同(注射)
■ 収載品目数:(処方)2992品目(注射)1506品目
※品目数は2021.5.9現在(重複・削除済みデータ含む)。
特徴は「信頼性」「最新性」「迅速性」
「クラウド型」の特徴は「信頼性・最新性・迅速性」です。
- (信頼性)情報源は信頼性の高いサイトや書籍
- (最新性)サイトは最新リンク、書籍は最新刊を利用
- (迅速性)薬品名検索だけで迅速アクセス
翻って、皆さんが日々使用されている医薬品集は次のどれでしょうか?
- 電子カルテ付属のDI検索機能(またはそれを利用して作成した医薬品集)
- 書籍(今日の治療薬・治療薬ハンドブック・ポケット医薬品集など)
- JAPIC PIA(院内採用医薬品集作成システム)等で作成した医薬品集
2020年にフジテレビ系で放映されたドラマ「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」の舞台となった萬津総合病院の場合は下記の通りでした。
萬津総合病院薬剤部で確認できた書籍版医薬品集
・治療薬マニュアル:24冊
・今日の治療薬:3冊
・治療薬ハンドブック:2冊
・・・腎臓系薬剤師くらば(YouTuber)さんの調査より
しかし、これらはお世辞にも「最新性」が高いとは言えません。
身も蓋もないことを言えば、病棟薬剤業務実施加算に関する通知に照らせば、インターネットを使用していない時点でアウトなのです。
≪A244 病棟薬剤業務実施加算(通知)≫
(3) 病棟薬剤業務とは、次に掲げるものであること。
イ 医薬品医療機器情報配信サービス(PMDAメディナビ)によるなど、インターネットを通じて常に最新の医薬品緊急安全性情報、医薬品・医療機器等安全性情報、製造販売業者が作成する医薬品リスク管理計画(RMP:Risk Management Plan)に関する情報、医薬品・医療機器等の回収等の医薬品情報の収集を行うとともに、重要な医薬品情報については、医療従事者へ周知していること。
「薬剤師向け」の医薬品集が存在しない理由
医療ニーズは多様化・専門化・複雑化の度合いを加速しており、必然的に実務上要求される医薬品情報もまた増加の一途をたどっています。
「添付文書だけでは薬剤師業務は成り立たない」
これは薬剤師ならばとっくに気づいている筈の事実ですが、奇妙なことに「薬剤師向け」の医薬品集はほとんど見当たりません。
理由は簡単です。
巷に存在する医薬品集は、医師を想定して作られているからです。
多忙な医師は、添付文書情報が端的に確認できれば十分なのです。
しかし、薬剤師は違いますよね?
「薬剤師向け」が存在しないのならば、自分で作るしかありません。
そう、3つの要件(信頼性・最新性・迅速性)を満たしたコレを作るのです。
さあ、フォーミュラリー(クラウド型医薬品集)を作りましょう!